海外にて年越しというのは、なかなか憧れのシチュエーションである。
しかし、考えてみれば今住んでいるのは中華人民共和国であり、紛れもない海外だといえる。
つまり2006年の元旦も海外で迎えたわけだが、旅行先と住んでいる街では意味も違うだろう。
逆をいえば上海から出さえすればそこは旅先であり、憧れの海外年越しを実現可能なのだ。
そんなわけで年末は小旅行でもと考えていたら、友人のfamifamiさんから杭州旅行のお誘い。
渡りに舟だとばかりにごいっしょさせて頂くことになり、年末年始は仲間たちと旅空の下となる。
かつてマルコポーロが『世界で最も美しく、華やかな天上都市』と記した街で新年を迎えるのだ。
上海から杭州までは列車で約2時間、思っていた以上に気軽に訪れることのできる街だ。
西湖の畔に佇む水郷のような街並みを想像していたのだが、予想以上に近代的な風景に驚く。
安宿にチェックインして荷物を預けて、まずは河坊街という古い街並みを再現した通りへ向かう。
みやげ物が並ぶ通りは明らかに観光客向けだが、それでも雰囲気ある街並みは悪くなかった。
小さな博物館を覗いたり、露天で買い食いしたり観光を満喫し、休憩がてらある有名な茶館へ。
そこで出会った日本からの旅人Didiは、行く宛もなく茶館でひとり、淋しく文庫本を読んでいた。
旅は道連れ、せっかくならばごいっしょしようということになり、新たな旅のメンバーが加わった。
150年の歴史を持つ老舗楼外楼にて、伝統的な杭州料理に舌鼓を打ったあとは西湖天地へ。
西湖天地はお洒落なカフェやレストランが立ち並ぶ、上海新天地と同じデザイナーによるエリア。
木々や建物にイルミネーションが施され、昔ながらの西湖とはまた違った魅力の人気スポットだ。
そこから湖沿いに北上していくと、西湖の風景を一望にできるテーブル付きのベンチが並ぶ。
その一角を日本人で陣取って、スタバで買ったコーヒーで温まりながら他愛のないおしゃべり。
今日のこと、今年のこと、来年のことに想いをめぐらせながら、いつ果てるともなく会話が続く。
やがて23時を迎え、周囲の中国人から奇異の目で見られつつも、日本の新年に歓声をあげた。
カウントダウンは、湖畔にそびえるハイアット・リージェンシ-のエントランスにて、セレブ気分で。
巨大スクリーンに映し出されたカウントダウンを、中国人も、日本人も、欧米人も一斉に唱える。
カウントがゼロになり、大きな拍手と歓声に包まれながら、天上から数百の風船が降り注いだ。
ぼくらは不思議な高揚と連帯感を胸に覚えつつ、シャンパンで乾杯して2007年到来を祝った。
宴の後、思った通りタクシーは掴まらなかったけれど、彼女たちと歩くのは苦痛ではなかった。
妻を除いて全員、2006年に知り合った仲間らと、こうして新たな年を迎えられたのが嬉しい。
2007年にはいったい、どれだけの人たちと出会えるのかと、楽しみに思いつつ宿へと戻った。