旅は道連れとはいうものの、まさか今回の旅行で妻以外の道連れが出来るとは思わなかった。
浦東空港で無事チェックインを終え、ほっと胸をなで下ろしていると「あ~!」と声をかけられる。
誰かと思って振り返れば、第二回海鮮まつりでごいっしょしたMさんとSさんのカップルであった。
同じ便でプーケットに行くんだなくらいに考えていたが、じつは同じツアーで同じホテルである。
考えてみれば友人が経営する旅行社のツアーに、共通の知人が参加していても不思議はない。
まったく不思議ではないのだけれど、予想だにしていなかったのでかなりびっくりしてしまった。
とはいえ、同じ海鮮を食らった仲だ、お邪魔にならない程度にご一緒させて頂くこととなった。
さて、同行すると決めたものの、気になるのは互いの距離感だ。
せっかく恋人同士が南の島にバカンスに訪れているっていうのに
ベッタリとお邪魔してしまっては、煙たがられる危険性がある。
付かず離れず、二人の邪魔をしないようにせねばと肝に銘じた。
そんなツアー初日は、島内半日観光を行うというので、さっそくご同行させて頂くことと相成った。
いきなり二人の時間を邪魔している気もするが、そんな心配はどうやら杞憂に過ぎないようだ。
観光が始まってしまえば彼らは彼らの、ぼくらはぼくらの世界に入ってしまったので問題ない。
必要に応じて会話を交わしたり写真を撮り合ったりしつつ、楽しい時間を過ごすことができた。
ガイド氏の案内するままに最初に向かったのは、小高い丘の上にある Kata View Point だ。
ここからのサンセットは絶景らしいものの、今はまだお昼過ぎなので記念写真を取るに留めた。
次に訪れたのはエレファント・ヒル・トレッキングと名付けられたタイらしいアクティビティである。
その名が示す通り象に乗って野を越え、山を越え、川を越えて、トレッキングを楽しむものだが
見るのと乗るのとは大違いで、掴まる場所もない象の首の上はなかなかにスリリングだった。
見るからに滑りやすい坂道や、川の中を渡るたびに、どうか転ぶなよと心の中で念じてしまった。
背中に乗ったぼくらの想いを知ってか知らずか、象は立ち止まって草を食んだりとマイペース。
30分の散歩を終えるころには、落ちないようにとしっかりしめた内腿はすっかり強ばっていた。
象トレッキングを終えてフラフラになりつつ訪れたのは、プーケット最大の寺院ワットチャロンだ。
日本とも中国とも違うきらびやかな寺院建築は、いかにもタイに来たんだなと実感させてくれる。
敬虔な仏教徒が多いタイでは、平日の昼間でも多くの参拝客が訪れ熱心に祈りを捧げていた。
ぼくらもそれに習い、線香、献花、金箔のお参りセットを入手して、本堂へと足を踏み入れる。
荘厳な院内には三体の像が鎮座し、まるでつぎを当てたように金色の箔をいくつも纏っている。
参拝者らはよくなるようにと願いを込め、自身の問題ある箇所と同じ部位に箔を貼っていく。
ぼくは仏教徒ではないけれど、人々の信じる想いの強さのようなものは感じ取ることができた。
その後はカシューナッツの加工工場兼土産物店や、宝飾品と土産物店などに連れて行かれる。
おそらくこちらで買い物することで、ガイド氏にバックマージンが入る仕組みだと思われるのだが
ぼくらは何ひとつ買うこともなく、試食のナッツや珍味を貪り、無料のドリンクを大いに楽しんだ。
最後にプーケット最大のショッピングモールに案内して貰い、この日の半日観光は幕を閉じた。
この日のツアーはドライバー1名にガイド1名を付けて、たったの600バーツ(約1,800円)だ。
リクエストすれば時間内ならどこにでも連れて行ってくれるので、タクシーなどよりずっと安い。
あちこち観光したい人は、事前に行きたい場所をチェックしておいて賢く利用したいものである。