然したる目的も持たず、ぶらぶらとそぞろ歩きするのが好きだ。
目的を持っての移動では通過点でしかない街並みも、あてもなく歩けば新たな発見がある。
壁の落書き、路地の奥、時には落ちているゴミですら、好奇の対象となって注意を引く。
偶然目にしたものが好みだったり、気に入るようなものであれば、こんな嬉しいことはない。
プラタナス並木の美しい復興路を散策中、路地裏にあるギャラリーを示す看板を見かけた。
案内に従い細い路地を進むと、モルタルの白壁に薄汚れた看板を掲げた入口が見える。
まるで個人の邸宅のようで、通りすがりを拒絶するかのような雰囲気が漂っている。
だが、よい作品に巡りあえる確信にも似た予感に突き動かされ、躊躇わずドアを開いた。
建物内部もまた白で統一され、ダークブラウンの床板との強いコントラストを見せる。
そして独特のタッチで描かれた女性画がいくつも、壁面で静かに色彩を放っていた。
この特徴ある絵柄は
M50でも見かけたもので、なかなか気に入っていたので覚えている。
Wang Xiaojin氏の作品で、穏やかな色使いを用い優雅な女性像を活き活きと描き出す。
内モンゴル出身の38歳で、上海を中心に精力的な創作活動を行なっているそうだ。
彼の作品以外はパッとしなかったが、ギャラリーに利用される建物には興味を引かれた。
天井の高い室内には暖炉なども設えられ、作りつけの小棚などからもセンスが感じられる。
ポーチから外に出れば、少し荒れ果ててはいるものの可愛らしいガーデンを目にできた。
狭く急な階段を登れば、辺りを木々たちに囲まれた全面ガラス張りの小部屋に繋がる。
今の季節は遠慮したいが、秋口には採光のよいここで読書などを嗜んでみたいものだ。
ガーデンでランチを楽しんだり、2階には書斎を作ろうなど、しばし妄想の世界で遊ぶ。
いつかこんな老房子を買い取り、妻とふたりで小さなレストランを営む……。
そんな老後も楽しいかもしれぬと、妄想は果てしなく続いた。
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Art Scene China
住所 上海市徐匯区復興西路37弄8号 (復興西路 x 鳥魯木齋路、交差点を西)
営業 10:30~19:30 (月曜定休)
電話 021-6437-0631
入場 無料
交通 地鉄1号 常熟路4号口 徒歩10分 / 公交 淮海中路(93路)
言語 中国語 / 英語
網址
http://www.artscenechina.com/