「ナポリを見て死ね」との有名な格言がある。
風光明媚でカンツォーネがよく似合う陽気な古都を、死ぬ前に一度は訪れろとの名文句だ。
輝くティレニア海を望む港町は、古い城壁や大聖堂が立ち並ぶとても美しい街だった。
だが、ぼくにとってはその街並みよりも、坂の途中にある小さな食堂での時間が想い出深い。
薄明かりに照らされた石造りの地下ホールには、割れんばかりの笑い声と笑顔があった。
旨い料理と上質のワイン片手に、足を踏み鳴らし、手を叩き、一緒になって歌い躍る。
国を越え、言葉を越えて過ごしたあの時間は、イタリア滞在中の大切な想い出である。
片言の英語で、今まで食べたマルゲリータの中でも一番旨くて感激したと告げると
オーナー氏は大喜びで、3枚もピッツァをサービスしてくれたのを今でも思い出す。
あのピッツァはまさに、これまでの人生の中でも最良のものだったように思うのだ。
そんな想い出深いナポリ風ピッツァを出す店がオープンしたと聞き、徐家匯を訪れた。
服務員に案内された2階店舗は、300坪の広大な空間にバラエティに富む席が用意される。
黄色を基調とした可愛らしい内装の店内では、ピアノとサックスによる生演奏も楽しめる。
無料で冷水が用意されていたり、服務員の接客態度などはどこか日本的なものを感じた。
帰宅後に調べたところ、オーナーはやはり日本人で、店名も氏の苗字をもじったもの。
日本的なサービスと相まって、店の雰囲気はどこかファミレスを彷彿とさせるものだった。
夜間はディナーコースが用意され、値段に応じて数種類のパスタやメインをセレクトする。
ピッツァはAコースでしか選択できないが、その場合にはメインを選択できないなどと
いろいろと制約が多いようで、食べたいものを選べないというもどかしさが付きまとう。
盛りつけはどの皿も美しく、舌だけではなく見目にも楽しめるようなものばかりだった。
味のほうも南瓜のポタージュやアペタイザはなかなか旨かったので期待していたのだが
パスタは明らかに茹で過ぎだし、ピッツァは妙に安っぽい味で拍子抜けしてしまった。
ドルチェでは少し持ち直したものの、メインの皿もあまりパッとせず総合評価は低い。
全体的に大きな不可があるわけではないが、どうもファミレス的料理の域を出ないのだ。
サービスや見た目などはよかっただけに、味のほうがついていけてないように感じた。
同じ日本人として頑張って欲しいと思うので、今後の成長に期待したい店である。
-------------------------------------------------
WOONOO 我能
住所 上海市徐匯区天鑰橋路220号2F(天鑰橋路 x 南丹東路、交差点を北)
営業 11:00~24:00 (21:30より BAR Time)
電話 021-5406-0999
予算 ディナーコースA 98RMB / B 128RMB / C 158RMB / D 198RMB
交通 地鉄1号 徐家匯 徒歩10分 / 公交 天鑰橋(15,44,112,236,572,710,732路)ほか
言語 日本語 / 中国語 / 英語