初めていちご大福を目にしたときは、誰がこんなものを作ったのかと呆れたものだ。
いちごと餡という異様な組み合わせを笑い飛ばしながらも、恐いもの見たさに頬張れば
こし餡の甘味といちごの爽やかな酸味が、味蕾の上で極上のハーモニーを奏でる。
自分の認識の甘さを悔い改めるより先に、残り半分を放り込み一気に飲み下してしまった。
いやはや、これを考え出した人は天才だなと、さっきとは真逆のことを考え始める。
バナナでもなく、リンゴでもなく、いちごだからこそのエポックメイキングだろう。
何ごともそうだが、常識に囚われていてはよいものは産み出せないと再認識した瞬間だ。
そんな、ぼくの人生に幾許かの教訓を与えてくれた、いちご大福に出会えるお店が
ここ上海にも存在すると聞いて、さっそくどんなものを出すのか調査に訪れた。
カフェバーやセレクトショップが立ち並ぶお洒落な通りに、件の Sakura*Do はあった。
ガラス張りの明るい店内はゆったりとしたムードで、落ち着いた佇まいを見せる。
純和風ということではなく、所々に和の素材やオブジェを効果的に配していた。
常連なのだろうか店長と親しげに話し込む客もいて、この店の居心地のよさを物語る。
今回は眺めの良い窓際の席に案内されたが、テラス風の2階席にはテーブルだけでなく
畳に座ぶとんを敷いた和の空間にて、心ゆくまで日本のムードを楽しむこともできる。
ワイヤレスLANも完備しているので、休日にはノートPC持参でくつろぐのもよさそうだ。
注文を受けてから作るといういちご大福だが、居心地がよいので待たされた感はない。
柔らかな求皮に菓子楊枝を突きたてると、もっちりと抵抗を示したのちに分断される。
その食感を想像するだけで、口中に涎が湧き出すのを我慢しながら撮影を済ませた。
一気にかぶり付きたい衝動を押さえ、さも上品そうに切り分けてから口へと運ぶ。
上あごにはり付くかのような求皮に口蓋を愛撫されながら、ゆっくりと歯を立てると
控えめな量のこし餡はサラリとほぐれ、口中に甘さという名の官能を描き出す。
そこへ果肉から迸る酸味が加わると、余韻を残しながらもスッと甘味は引いていく。
最後に抹茶をゴクリとひとくち含めば、日本茶特有の得もいわれぬ苦味が広がり
よくぞ日本人に生まれけりと、自らの生まれた国とその文化を称えたくなる。
先日2周年を迎えたSakura*Do、次はお気に入りの本を携えて出かけたい店だ。
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Sakura*Do / 桜花堂
住所 上海市徐匯区新楽路142号 (襄陽北路 × 新楽路、交差点を西へ)
営業 12:00~24:00 (日は18:00まで / ランチタイムは12:00~14:30)
電話 021-5404-1683
予算 いちご大福とお抹茶のセット 40RMB / 珈琲各種 30RMB / ランチ 60RMB
交通 地鉄1号 陝西南路 徒歩10分 / 公交 襄陽北路(94路)ほか
言語 日本語 / 中国語 / 英語
網址
http://www2.odn.ne.jp/~cdl85330/