中国にある仏教寺院には、カネの匂いが付きまとう。
寺院を訪れてまず驚かされるのが、参拝するのに入場料を取られることだ。中に入ればいろいろなみやげ物が売られており、線香やロウソクなどの『お参りグッズ』も多い。線香は数元のものから、数百元する巨大なものまで取り揃え、面子と見栄を気にする中国人から現金を巻き上げる。
立派な山門の前には大勢の観光客たちがひしめいていた
それは『仏教』という名のサービスを売り物にした、一種の経済活動なのではないだろうか。そして、そんな想いを確信へと変えてくれたのが、先日訪れた金剛禅総本山少林寺である。
バスを降りると、目の前に広がる禅宗レジャーゾーンと名付けられたエリア。3億5千万元を投じて建設中で、大スクリーン完備の案内所や、みやげ物・飲食店などはすでに完成している。
武術館(学校)は武術実演チームを輩出し、毎年世界公演を行っているし、登録商標された少林寺関連商品も多い。最終的には自然を活かした巨大な舞台装置が作られ、総勢700名が出演して音楽と踊り、そして武術を繰り広げる大パフォーマンスが観光の目玉として用意されるという。
歴史ある少林寺がテーマパークの様相を呈してきたのは、『袈裟を被ったCEO(最高経営責任者)』の異名を取る住職、釈永信氏の政策による。彼の信条は「少林寺は企業理念を持って社会によりよい商品、よりよいサービスを提供すべき」というもの。まさに仏教の商品化に他ならない。
氏の行動に対してインターネットサイトを中心に批判が相次いでいるが、河南省政府からの覚えはよい。先日、観光業振興に貢献したとして、登封県政府からは高級車が贈られたそうである。
そんな金満寺院と化したかに思える少林寺ではあるが、昔ながらの寺院部分は聖域としての空気を今もなお保ち続けていた。残念ながら建物の多くは中国内の他の寺院と同じく、焼失や破壊により失われて久しいが、それでも1500年の歴史を持つ古刹としての風情をたたえていた。
見どころは西方聖人(達磨大師)の堂で、石畳の床が等間隔で凹んでいるのが見て取れる。これは僧兵らが長い年月をかけてこの場所で修行を続けた結果、踏みしめられた床が窪んでいったという。そんな修行としての武術が見世物になりつつある現状、達磨大師はどう思うだろうか。
少林寺を出て少し行ったところに、塔林と呼ばれる墓所がある。敷地内に200基以上そびえる塔は、歴代住職たちの墓石である。その人の人気に応じて大きさが、徳の高さが層の数となる。果たして袈裟を被ったCEOが亡くなったとき、どのような塔が立てられるのかが気になるところだ。
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少林寺
種別 寺院
住所 河南省登封県高獄少室山北麗
電話 0371-62749305
入場 100RMB
言語 中国語
備考 巨大な仏教テーマパーク?!