暑い暑いと聞いていた西安だが、列車から降り立った瞬間に寒さが身体を包み込む。
この日の西安の気温は16度。冷たい風が吹き荒さび、体感温度をそれ以下に引き下げていた。事前の天気予報によれば旅行中はずっと25度以上とされており、上着を持っていない半袖のみの参加者も多く見られた。この寒暖差は大陸内陸部ならではのものであろうか。
石造りの建物はすべて再建だ
寒いときには温泉に限る。というわけではないが、最初に訪れた観光地は、西安市街から東に30キロの地点にある華清池だ。ここには3千年以上昔から温泉の湯元があり、歴代の皇帝が湯治場として利用していたという。唐の玄宗皇帝が、傾国の美女楊貴妃とともに、享楽に耽った場所としても名高い。
敷地内には数々の宮廷建築や美しい庭園などが設えられているが、これらはすべて近代になって再建されたものだ。内部は博物館や売店などになっており、一部の建物内部には発掘された当時の湯船が見られる。一般向けの入浴施設は見られないが、有料にて足湯・手湯などを楽しむことができる。多くの温泉成分を含み、関節炎や皮膚病に効果があるのだとか。
またここは蒋介石が軟禁された西安事件の舞台とされ、近代中国史を学ぶうえでは重要な場所となる。が、残念ながら不勉強なのでここで蒋介石が襲撃されたといわれても、今ひとつパッと来なかった。この辺りは掘り下げて調べてみると、いろいろと面白いのではないかと思うのだが。
その後は始皇陵の地下宮殿を再現した秦陵地宮を見学、昼食あとはお待ちかねの兵馬俑だ。
広大な空間にずらりと並ぶ兵馬俑はたしかに圧巻だが……
秦始皇帝兵馬俑博物は西安観光最大の目玉で、世界的に見ても学術的価値が高いものだ。
本来なら陵墓本体である始皇陵が最大の見どころとなるはずだが、残念なことにその存在は明らかながら発掘調査は行われていない。我々は地上からの探査と、その副葬物ともいえる兵馬俑坑の規模から、太古に築かれた世界最大の陵墓を想像するしかないのである。
そんな兵馬俑坑には1万体を越える兵士や馬の陶俑が埋められており、始皇陵を守る無言の軍隊として今も半数以上が地下に埋もれたままとなっている。
兵士たちの表情は1体1体が異なっており、このような途方もないものを作らせることが出来た始皇帝の権力に身震いを覚えた。
数々の王朝が栄えた西安には今も、数々の歴史ロマンが地中に埋められているようである。